16cmの長岡バックロードホーンといえば、D-37が定番であることは誰も疑いをもたないところであろう。だが、実はD-33という型番のバックロードエンクロージャが存在する。これは、長岡先生がD-55を設計されたと同じ時期に設計をされたものと思われる。空気室のデッドスペースにウレタンを装着する仕様がD-55とそっくりである。
先日20cmのBHとしてはD-58系よりD-55の方がよいのではないかという仮説を立てたところであるが、実は、16cmもD-37よりはD-33の方がいいのではないだろうか、という疑問がわいたのである。ということで、D-33をモデリングして比較してみた。
▲これがD-33
特徴的なのは天板である。以降の作品では側板の間にあるのだが、ここでは、側板を含めて全面を覆うかっこうとなっている。D-58系のデザインを見慣れているせいもあってかなり違和感がある。
▲リアビュー
余った端材を背面板の補強に使用しているのだが、これがあまり見栄えがよくない。これによってこのエンクロージャの完成度が一気に下がってしまっている。
▲中のようす
玉砂利しきり板もD-55と同じ設置方法だ。
▲D-37(左)とD-33
こうして比較すると、D-33の奥行きはD-37に比べてかなり大きい。D-37が450mmなのに対してD-33は540mm(!)もあるのだ。540mmと言えばD-55の奥行きと同じなのである。16cmなのにこの奥行きとは!つまり、D-33が定番となりえなかったのは単にこの奥行きの大きさが嫌われた可能性が高い。しかし、逆にD-55の思想が色濃く反映されたこの設計は、音質的にはD-37を凌駕することは容易に想像できるのである。それでは、D-37とD-33の数値を比較してみよう。
D-37 | D-33 | |
空気室 | 5.226 | 5.184 |
音道1 | 120 | 120 |
音道2 | 139.2 | 132 |
音道3 | 180 | 204 |
音道4 | 228 | 276 |
音道5 | 300 | 408 |
音道6 | 648 | 708 |
音道面積をグラフにすると、
▲D-37とD-33の音道面積の比較グラフ
D-33の方が奥行きの分だけ広がり率が大きくなっているのがわかる。低音はD-33の方が出るのではないだろうか。ホーンとしては明らかにD-33の方が優秀だ。部屋の設置スペースがあって、音質を重視するならD-33という選択肢があってもいいだろう。
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